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コンテナのセキュリティ脆弱性を検知するツール「Dockle」の開発者であり、看護師から起業家、フリーランスエンジニアと特殊なキャリアを歩まれている天地知也さん。
フリーランスエンジニアとして大企業を中心に複数の企業をサポートしつつ、2022年からは Findy Freelance 経由で、世界30カ国に140社のグループ会社を持つヤマハ発動機グループの IT 活用を推進するヤマハモーターソリューションでも活躍されています。
今回は天地さんを招いて、独立するまでの経緯やフリーランスエンジニアとして働く上で意識するべきポイント、Findy Freelance を使用したきっかけ、ヤマハモーターソリューションで働く魅力について話を伺いました。
■プロフィール 天地 知也 (@tomoyamachi)
コンテナのセキュリティツールであるOSS「Dockle」の開発者。個人的におすすめのコンテナセキュリティツールは「Trivy」である。2017年に独立し、フリーランスのセキュリティスペシャリスト兼エンジニアとして活動している。
趣味ではじめた開発をきっかけに、看護師からエンジニアに転職
──天地様のご経歴を教えていただけますか。
もともとは救急病棟の看護師として働いていました。母が看護師だった影響もあり、手に職を持った方がキャリアに困らないだろうと思ったんです。
看護師として働きながら、趣味では友人とオンラインゲームを開発していました。そこで実装や設計の面白さに魅了され、収益化もでき始め、開発を開始した翌年に友人とゲーム開発の会社を立ち上げました。
ただ経営を通して「自分は起業家よりもエンジニアの方が向いているのではないか」と思うようになって。次の挑戦としてソーシャルゲーム会社に就職し、そこでは「なんでもやるエンジニア」として、さまざまな領域を担当させていただきました。スマートフォンが普及しだした頃だったため、モバイルアプリ化の対応もしていましたし、新規イベントの実装やデータエンジニアリングもしていました。経営陣向けのレポート作成なども担当していましたね。
──幅広く担当されていたんですね。
そうですね。その後自分でプロダクトマネージャ試験を受けて資格を取得したことをきっかけに、プロジェクトマネージャーを任されるようになりました。
しかし、マネジメント業務が増えていくにつれて「技術を極めたい、技術の幅を広げたい」という思いが強くなっていったんです。より技術を追求したいと言う想いでフリーランスエンジニアとして独立することにしました。
フリーランスとして、技術を追求しながらスキルの幅を広げていく
──他社に転職することもできたと思うのですが、なぜフリーランスの道を選ばれたのですか?
当時は、会社で成果を出すとマネージャーに昇格するのが一般的で、技術を追求するエンジニアであり続けるにはフリーランスが最適だと思いました。
また当時はリモートワークが浸透しておらず、正社員であれば通勤が必須の時代だったため、フリーランスとして場所に縛られない働き方をしたかったんです。
──フリーランスエンジニアとして、現在はどのような領域を担当されているのですか?
現在は、セキュリティ領域をメインに、OSSの開発やGoによるバックエンド、もしくはReactによるフロントエンドの技術的なサポートをしています。またインフラ領域にも関わっていて、コンテナ化、Kubernetesの導入・運用なども担当しています。
──セキュリティ領域をメインにされている理由が気になります。
セキュリティを知るためには、あらゆる技術に関する知識が必要ですし、セキュリティ領域を追求すれば必然的に技術の幅が広がるだろうと思ったんです。数年前に比べて、セキュリティ領域の技術レベルはグンと上がっていますから。
ただ「一生セキュリティ領域を追求していきたい!」というわけではなく、現時点で必要だと思っているから勉強を続けているという感覚です。
──フリーランスは専門外の領域に挑戦する機会がないという意見も聞きます。天地さんはどのようにして領域を広げられているのでしょうか。
自分が挑戦したいことを積極的に提案するようにしています。もちろん、提案するだけではなく、しっかりと成果を出すことも意識しています。
例えば参画したプロジェクトでは、一番初めにすべてのリポジトリをチェックするようにしています。セキュリティ面を確認した上で、自動検知できるスクリプトをつくる。そういった行動を通して、自分ができることや自分の価値を適切に伝えるようにしています。すると、信頼貯金が貯まっていって、専門外であっても「これもやってみない?」と、クライアントから声をかけてくださるようになるんですよ。
またクライアントの社内にもノウハウがない場合には「外部の専門家に依頼しましょう」と提案することもあります。専門家の知識を吸収することで、クライアントだけでなく個人としての成長にも繋がります。実際に、私は過去参画したプロジェクトの中でReactやコンテナ技術、セキュリティについて学んできました。
──ちなみに技術アドバイザーもされていると思うのですが、その際はどのようなことを意識されているのですか?
「これはできません」とは言わないようにしています。むしろ「これもできますが、どうしますか?」と、自分の得意分野をアピールしますね。
またアドバイザーだと外部の知見を伝えることが多いと思うのですが、私はクライアントの内部情報を把握することを重要視しています。現在参考にしているドキュメントや社内ルールを教えていただいてから、その会社のルールの中で何ができるかを考える、というスタイルですね。会社のルールを理解せずに提案をすると、クライアントへの非難だと受け取られる可能性もありますから。
Findy Freelanceの魅力はユーザーサクセスのサポート力
──天地さんは大手企業との契約が多いと思います。契約する際に譲れないポイントはありますか?
メンバーとしてジョインできるかどうか、を重視しています。言われたことをするだけの作業のような仕事よりも、裁量を持ってこちらからも提案できるような働き方ができる職場にやりがいを感じます。
あとは自由な働き方ができるかどうかについても、最初の面談で必ず確認するようにしています。
──天地さんから見た Findy Freelance の魅力はどんなところだと思いますか?
こちらの希望に合った案件を提案してくれるのが魅力だと思います。ユーザーサクセスの方がこちらの条件をしっかり理解した上で案件を紹介してくださるので、企業とのやり取りで消耗してしまう、なんてことが起きないのもうれしいです。
ヤマハ発動機グループをグローバルに支えるYMSLでの仕事
──天地さんは Findy Freelance 経由で、2022年からヤマハモーターソリューション社(以下、YMSL)で稼働されていますね。現在はどのような業務を担当されているのですか。
アプリケーションセキュリティチームに所属しており、各開発チームから届くセキュリティに関する質問や相談に乗っています。またアプリケーションセキュリティチームの中で、アプリケーション開発におけるセキュリティに関する情報を全体に周知するための方法を考えたり、シフトレフトやDevSecOpsをどのように進めていくのかをメンバーと一緒に検討したりしています。私自身が手を動かして作業をすることもあります。
YMSLだけでなくヤマハ発動機グループに関連する相談を受けることもあり、現在はEUサイバーレジリエンス法(CRA)に対応するためのSBOM作成プロジェクトにも携わっています。
──様々なことをされているのですね。天地さんはYMSLにとって一人目のフリーランスエンジニアだったとお伺いしていますが、最初は組織に馴染むのが大変だったのではないですか?
いいえ、実はそんなことありません。担当者の方が社内に向けてしっかりと説明してくださっていたようで、馴染むのに苦労しませんでした。メンバーとして迎え入れた上で、作業要員ではなく一人の社員として扱ってくださる会社です。
──YMSLで長く働き続けられている理由はなんだと思いますか?
コミュニケーションで不安を感じることがないからだと思います。私は基本的にリモートで働いていて、オンラインでのやり取りが多いのですが、皆さんチャットの返信が早いんですよ。オンライン会議などの場では、ほとんどの人の顔が見える状態にしてくださるのもうれしいですね。声だけでは感情が把握しづらいですから。
定例などを除いて、働く時間を自由に決められるというのも、大きく影響していると思います。
──YMSLの魅力はどのようなところにあると思いますか?
穏やかな人が多く、働きやすい会社だと思います。
常に複数のプロジェクトが動いていて、得意な領域でなくてもチャレンジできる機会があるのも魅力ですね。実際に私は携わる領域が徐々に広がっていますし、やりがいを感じられています。
あとは重要な話をするときに本社(静岡県)に行くこともあり、その際にヤマハ発動機のバイクがずらっと展示されているところを見られるのもポイントのひとつです。バイク好きな方には最高の会社だと思います。
AIの進化を追い風とし、技術を追求していく
──AIに関する質問もさせてください。AIによりエンジニアの役割が変わってくると言う話もありますが、天地さんは AI の進化についてどのように感じられていますか?
AI の進化は自分にとって追い風だと思います。以前よりも作業負担は減ってきていますが、現在のAI技術では私の能力以上のものは出すことはできていません。つまり、負担を減らした上で、自分の能力を最大限に発揮できるようになっているんです。時間が短縮された分、自分の技術力を磨くことやチームのスキル向上に、より多くの時間をかけられるようになっています。
──天地さんが「気になる技術」というのは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?
汎用性の高いものですね。「どれだけ多くの人にリーチできるか?」が重要です。多くの人にリーチできる領域で、かつ先人がいない状態であり、自分のcanとも接続できるなら挑戦する、というイメージですね。
例えば、私が「Dockle」を開発する前は、コンテナに対するセキュリティ製品があまり出ていませんでした。汎用性が高い技術であり、セキュリティに関する知見を持っている人も少なかったため「これは私が価値を出せる領域だ」と思い、挑戦することにしたんです。
──「キャリアは掛け算で考える」を、体現されているのだなと思いました。最後に、今後のキャリアについても話せる範囲で教えていただけますか。
今後も技術支援を続けていきたいと考えています。起業してコンテナセキュリティの製品を作ることも考えたのですが、私にはフリーランスが向いていると思いますし、一人でできる範囲で価値のあるものを提供していきたいです。

