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▪プロフィール 田中健太 | 合同会社WillRobotics 代表 / 株式会社ファースト・オートメーション CTO
新卒から大手自動車メーカーにてロボットの研究開発を行う。 2021年から独立して合同会社を設立し、フリーランスエンジニアとして活動。 ロボティクスやWeb、機械学習といった技術の受託開発を様々な分野の企業から幅広く手掛け、2024年2月に株式会社ファースト・オートメーションにCTOとして参画。 AIを用いたSaaSの開発責任、AI導入のための講師やコンサルティングとしても活動している。
▪プロフィール 成澤克麻 | 合同会社N-Works 代表
大学院修了後、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社ラブグラフ、フリーランスを経て2021年にN-Worksを創業。 これまでにSALESCORE株式会社のCTOを務めるなど、スタートアップの開発組織に深く携わる。 国内最年少でAI分野のトップカンファレンスに論文を通すなど、様々な分野での多種多様な経験を持つWebサービス開発のプロフェッショナルとして、数多くの企業の技術顧問や開発支援を担っている。
AI時代における採用のリアルな現状
ー代表・CTO目線として、自社の採用の動向やその背景を教えてください。
成澤さん:正直に申し上げると、現在経営している開発会社では採用は縮小傾向にあります。 周囲のCTOからも「エンジニアを少数精鋭に絞り、残りはAIで代替する」という事例を聞くようになってきました。 自分でAIを使った方が早くてコストパフォーマンスも良いというのが、経営者目線の本音です。
これは「エンジニアが優秀ではないから切る」のではなく、優秀な方が担う仕事さえ「AI+自分(経営者)」で完結してしまう場面が増えているということです。
田中さん:私自身の会社は、個人でやっているような感じなので、採用自体は行っていません。CTOをやらせていただいている会社の方では、資金面でセーブしているという事情もあり、あまり積極的に採用はしていません。
すでに半年前の段階でもAIでコーディングがそこそこできるようになっていたので、「コーディングだけできる人」は採用を考えにくい状況にあります。
今、求められるのは「フルサイクルな遂行力」と品質に責任を持つ「ハーネス構築力」、そして代替不能な「対人折衝」
ーAI時代において、具体的にどのようなスキルセットや経験を持つ人材を求めているのでしょうか。
田中さん:一言で言えば、要件定義から運用まで 「フルサイクルで遂行するスキル」 です。
以前はフロント・バックエンドと分業していましたが、今はAIがその境界を埋めてくれます。 大切なのは「コードが動くこと」ではなく、事業状況に応じて最適な技術を選び、将来的な保守コストまで責任を持つこと。
アウトプットは「氷山の一角」に過ぎません。その水面下にある「なぜこの技術か?」という意思決定の背景こそが、エンジニアの価値になります。
成澤さん:私が重要だと考えているスキルの一つは 「品質保証(ハーネス構築)」 です。
AIにコードを書かせるのはもはや前提で、その上で顧客の抽象的な要望を設計に落とし込み、AIが生成した成果物を厳しくレビューして品質を担保する力が求められます。
いわば、全員が「AIエージェントの監督役(あるいは開発会社の社長)」のような視点を持つ必要があります。ポジショントークもありますが、「一億総開発会社社長」の時代ですね笑
もう1つは、AIに代替できない 「対人折衝・コミュニケーション力」 です。
顧客の真のニーズを引き出すヒアリング能力や、相手の状況に合わせた調整は、まだAIにはできません。そうした人間ならではの領域がこれまで以上に求められています。
私がキャリアをスタートさせたDeNAには、「ことに向かう(本質的な価値を提供することに集中する)」という言葉があり、事業の成功のために何でもやる文化がありました。
技術を共通言語として周囲を巻き込み、自律駆動的な姿勢で人と向き合うコミュニケーション能力が、これからのエンジニアにとって強力な武器になると思います。
ーそうした「AIには代替できない能力」を、実際の面接ではどのような質問で見極めているのでしょうか。
田中さん:「意思決定の背景やプロセス」を深掘りします。アウトプットよりもむしろ、その裏側にある「なぜその技術を選んだのか」「他にどんな検討をしたのか」を重視します。
メリットだけでなく、デメリットや将来的な運用コストまで比較した上で「意思決定」ができているかを確認することで、その方が目先の開発だけでなく、プロダクト全体(フルサイクル)に責任を持てる人材かどうかを見極めています。
成澤さん:キャリアを深掘りし、ビジネス課題への「向き合い方の密度」を確認します。 例えば「〇倍の高速化を実現した」という実績に対し、どんな計測を行い、なぜそのオプションを選び、他を捨てたのか。 Railsを10年やっていても、簡単なコードを書き続けてきた人と、複雑な課題に向き合い続けてきた人とでは、AIを使いこなす際の判断力に大きな差が出ると思います。
また技術面談の場では、設計課題の内容をあえて少し分かりづらく説明し、「それってこういうことですか?」と明るく逆質問が来るかといったコミュニケーションの柔軟性も見ます。相手の意図を汲み取る姿勢や経験に裏打ちされた暗黙知は、AIには真似できない「ことに向かう」ための能力だと思います。
AI時代を生き抜く「現場」の選び方。自らをAIに代替されない人材へと導く環境とは
ー「フルサイクルな経験」を積むためには、どのような環境を選ぶべきでしょうか。
田中さん:規模の小さい会社や立ち上げ直後のプロジェクトが良いでしょう。全体を任されやすく、要件を自分で考え抜く必要があるからです。
私自身、副業を始めたり、フリーランスとして入った会社は基本的にスタートアップばかりでした。CTOになった会社も、できて間もない時期に入っています。
大企業であっても、AIを活用するための部署の立ち上げなどに顧問的に入ったりするので、スタートアップに限らず新しいことに挑戦していく環境はチャンスがあると思います。
成澤さん:私も同感です。まずは「自分のスキル+α」で越境できる環境がおすすめです。 私自身、最初はバックエンドでしたが、スタートアップで求められるままフロントエンド、デザイン、ビジネス要求の整理……と範囲を広げていきました。 「フリーランスは自分で値段を決めなければならない。それはまさに経営そのもの」という田中さんの言葉通り、自分の価値を自分で高めていける環境に飛び込んでほしいですね。
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【編集部コメント】
AIの台頭によって、「ハーネスエンジニアリング」や「フルサイクル」で動けるエンジニアへの需要はかつてないほど高まっています。
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